創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年特別展|『名作誕生-つながる日本美術』

第1章 祈りをつなぐ
仏像や仏画などの信仰を背景とする美術は、経典などに記されたことに基づいて造形化される一方で、特別なゆかりや革新的技法、形をもつ名作を規範として継承し、数々の名作が誕生してきました。第1章では、古代から中世へ、人々の祈りがつないだ仏像、仏画、説話画の数々を展示し、その規範と名作たる革新性に注目します。

1 一木の祈り 1 一木の祈り

天平勝宝5年(753)、中国・唐の高僧鑑真[がんじん]とともに渡来した仏師たちは、日本の木材に着目し、一本の木から重量感あふれる仏像を彫り出しました。同時代の中国においても最新の表現だったこの木彫像につらなる仏像は、平安時代前期を通じて数多く造られ、大きな影響を残したのです。

重要文化財 伝薬師如来立像 画像提供:奈良国立博物館
(撮影:森村欣司)

重要文化財
伝薬師如来立像でんやくしにょらいりゅうぞう
奈良時代・8世紀
奈良・唐招提寺蔵
【通期展示】

重要文化財 伝衆宝王菩薩立像 画像提供:奈良国立博物館
(撮影:森村欣司)

重要文化財
伝衆宝王菩薩立像でんしゅうほうおうぼさつりゅうぞう
奈良時代・8世紀
奈良・唐招提寺蔵
【通期展示】

重要文化財  薬師如来立像

重要文化財
薬師如来立像
平安時代・10世紀
京都・春光寺蔵
【通期展示】

重要文化財 十一面観音菩薩立像 画像提供:奈良国立博物館
(撮影:森村欣司)

重要文化財
十一面観音菩薩立像
奈良時代・8世紀
大阪・道明寺蔵
【通期展示】

2 祈る普賢 2 祈る普賢

『法華経』に基づいて表される白象に乗った普賢菩薩[ふげんぼさつ]像は、9世紀半ばに慈覚大師円仁[じかくだいしえんにん]が唐から請来した図像(現存せず)によって、新たに合掌する姿で表す潮流ができました。ここではこの「合掌普賢[がっしょうふげん]」につながる仏画とともに、信心深い女性の姿を反映した十羅刹女[じゅうらせつにょ]とともに表した名作もご堪能ください。

国宝 普賢菩薩騎象像

国宝
普賢菩薩騎象像ふげんぼさつきぞうぞう
平安時代・12世紀
東京・大倉集古館蔵
【通期展示】

国宝 普賢菩薩像

国宝
普賢菩薩像ふげんぼさつぞう
平安時代・12世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

紺紙金字法華経(開結共)のうち観普賢経

紺紙金字法華経こんしきんじほけきょう開結共かいけちとも)のうち観普賢経かんふげんきょう
全10巻のうち1巻
平安時代・12世紀
滋賀・百済寺蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

重要文化財 普賢十羅刹女像 (撮影:森村欣司)

重要文化財
普賢十羅刹女像ふげんじゅうらせつにょぞう
鎌倉時代・13世紀
奈良国立博物館蔵
【展示期間:5月8日~27日】

3 祖師に祈る 3 祖師に祈る

日本に仏教を広めた祖師[そし]たちの生涯は、平安時代以降、障子絵や掛幅などの大画面に盛んに描き継がれ、法要などの場を飾りました。ここでは現存最古の祖師絵伝である「聖徳太子絵伝」(東京国立博物館蔵)ほか大画面説話画の名品を通して、絵伝と絵堂がつなぐ祖師への祈りをご覧いただきます。

重要文化財 聖徳太子絵伝 6幅のうち第3幅

重要文化財
遠江法橋筆
聖徳太子絵伝
6幅のうち第3幅
鎌倉時代・元亨3年(1323)
大阪・四天王寺蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

聖徳太子絵伝 7幅のうち第6幅

聖徳太子絵伝
7幅のうち第6幅
南北朝時代・14世紀
大阪・叡福寺蔵
【通期展示】

第2章 巨匠のつながり
近年とくに人気の高い日本美術史上の巨匠たちもまた、海外の作品や日本の古典から学び、継承と工夫を重ねるなかで、個性的な名作を生みだしました。第2章では、雪舟、宗達、若冲という3人の「巨匠」に焦点を絞って、代表作が生まれるプロセスに迫ります。

4 雪舟と中国 4 雪舟と中国

雪舟等楊[せっしゅうとうよう](1420~1506?)は、南宋時代の夏珪[かけい]や玉㵎[ぎょくかん]など、過去の名画家の作品に学ぶだけでなく、水墨画の本場である中国へ旅し、同時代である明[みん]の画風も取り入れて、独自の水墨画を確立しました。ここでは雪舟と中国のつながりについて、実景図、山水図、花鳥図、倣古[ほうこ]図の4つのグループで見ていきます。

国宝 雪舟等楊筆 天橋立図

国宝
雪舟等楊筆
天橋立図あまのはしだてず
室町時代・15世紀
京都国立博物館蔵
【展示期間:5月8日~27日】

重要文化財 雪舟等楊筆 倣玉澗山水図

重要文化財
雪舟等楊筆
倣玉㵎山水図ほうぎょくかんさんすいず
室町時代・15世紀
岡山県立美術館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

伝玉澗筆 山水図

伝玉㵎筆
山水図
中国・元時代・14世紀
京都・大雲院蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

重要文化財 雪舟等楊筆 四季花鳥図屛風

重要文化財
雪舟等楊筆
四季花鳥図屛風しきかちょうずびょうぶ
室町時代・15世紀
京都国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

5 宗達と古典 5 宗達と古典

安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した俵屋宗達[たわらやそうたつ](生没年不詳)は、「俵屋」という絵屋を営む町絵師でありながら、『伊勢物語[いせものがたり]』や『西行物語[さいぎょうものがたり]』など古典文学を主題とした絵画を多く描きました。ここでは扇絵[おうぎえ]と絵巻の名作を通して、宗達が学んだもの、吸収したものに着目し、その創作の源を探ります。

俵屋宗達筆 扇面散屛風

俵屋宗達筆
扇面散屛風せんめんちらしびょうぶ(左隻)
江戸時代・17世紀
宮内庁三の丸尚蔵館蔵
【展示期間:4月13日~5月13日】

俵屋宗達筆 扇面散貼付屛風

俵屋宗達筆
扇面散貼付屛風せんめんちらしはりつけびょうぶ
江戸時代・17世紀
東京・出光美術館蔵
【展示期間:5月15日~5月27日】

6 若沖と模倣 6 若沖と模倣

伊藤若冲[いとうじゃくちゅう](1716~1800)の作品には、既成の形[かたち]を再利用して新たな造形を作るという表現上の特徴があります。画風を模索していた頃には中国の宋元[そうげん]画を模写し、また生涯を通じて同じモチーフの同じ型[かた]を繰り返し描いて、独自の表現に至りました。ここでは鶴図と鶏図について宋元画の模倣と自己模倣という切り口でご覧いただきます。

伊藤若冲筆 仙人掌群鶏図襖

重要文化財
伊藤若冲筆
仙人掌群鶏図襖さぼてんぐんけいずふすま
江戸時代・18世紀
大阪・西福寺蔵
【通期展示】

伊藤若冲筆 雪梅雄鶏図

伊藤若冲筆
雪梅雄鶏図せつばいゆうけいず
江戸時代・18世紀
京都・両足院蔵
【通期展示】

つながり

若冲はいくつかの鶏の型を何度も繰り返し描きました。晩年の代表作「仙人掌群鶏図襖」(大阪・西福寺蔵)に描かれる鶏は、初期の細密な描写と中期以降の水墨画の大胆なデフォルメとを融合した姿であり、一番右の雄鶏の姿は「雪梅雄鶏図」(京都・両足院蔵)に原型を求めることができます。

第3章 古典文学につながる
日本を代表する古典文学である『伊勢物語』や『源氏物語』。人々の心に残る場面は、その情景を想起させる特定のモチーフの組み合わせによって工芸品に表され、広く愛されてきました。第3章では、文学作品から飛び出して連綿と継承された意匠の名品を、『伊勢物語』から「八橋やつはし」「宇津山」「竜田川たつたがわ」、『源氏物語』から「夕顔ゆうがお」「初音はつね」を通してたどります。

7 伊勢物語 7 伊勢物語

平安時代初期に成立した歌物語である『伊勢物語』からは、燕子花[かきつばた]と橋を表す「八橋」、紅葉に彩られた山道を表す「宇津山」を取り上げます。

国宝 尾形光琳作 八橋蒔絵螺鈿硯箱

国宝
尾形光琳作
八橋蒔絵螺鈿硯箱やつはしまきえらでんすずりばこ
江戸時代・18世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

重要文化財 尾形乾山作 色絵竜田川文透彫反鉢

重要文化財
尾形乾山作
色絵竜田川文透彫反鉢いろえたつたがわもんすかしぼりそりばち
江戸時代・18世紀
神奈川・岡田美術館蔵
【展示期間:5月8日~27日】

 重要文化財 縫箔 紅白段短冊八橋雪持柳模様

重要文化財 
縫箔ぬいはく 紅白段短冊八橋雪持柳模様こうはくだんたんざくやつはしゆきもちやなぎもよう
安土桃山時代・16世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

つながり

らころもつつなれにしましあればるばるきぬるびをしぞおもふ
親しい恋人を京に残し、男が東国へ下る道すがら、八つの橋が架かった川に燕子花が咲いていた。そのときの想いを「かきつばた」にかけて詠んだこの歌は多くの人々に愛され、工芸デザインの定番となりました。

重要文化財 伝俵屋宗達筆・烏丸光広賛 蔦細道図屏風

重要文化財
伝俵屋宗達筆・烏丸光広賛
蔦細道図屛風つたのほそみちずびょうぶ
江戸時代・17世紀
京都・相国寺蔵
【展示期間:5月8日~27日】

重要文化財 深江芦舟筆 蔦の細道図屏風

重要文化財
深江芦舟ふかえろしゅう
蔦細道図屛風
江戸時代・18世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:5月8日~27日】

8 源氏物語 8 源氏物語

『伊勢物語』に続き平安時代中期に成立した長編物語『源氏物語』からは、垣根に咲く夕顔と御所車を表す「夕顔」と、梅にとまる鶯[うぐいす]を表す「初音」を取り上げます。

重要文化財 源氏夕顔蒔絵手箱

重要文化財
源氏夕顔蒔絵手箱ゆうがおまきえてばこ
室町時代・15世紀
京都・相国寺蔵
【通期展示】

重要文化財 初音蒔絵火取母

重要文化財
初音蒔絵火取母はつねまきえひとりも
室町時代・15世紀
神奈川・東慶寺蔵
【通期展示】

国宝 幸阿弥長重作 初音蒔絵櫛箱(千代姫婚礼調度のうち) ©徳川美術館イメージアーカイブ/DNPartcom

国宝
幸阿弥長重こうあみちょうじゅう
初音蒔絵櫛箱(千代姫婚礼調度のうち)
江戸時代・17世紀
愛知・徳川美術館蔵
【展示期間:5月8日~27日】

第4章 つながるモチーフ
身近な自然物や人々の内面を表し今に伝わる名作たちは、すでにある名作の型や優れた技法を継承しつつ、斬新な解釈や挑戦的手法によって誕生してきました。第4章では、「山水」「花鳥」「人物」の主題と近代洋画の名作からさまざまなモチーフや型をご覧いただき、人と美術のつながりをご覧いただきます。

9 山水をつなぐ 9 山水をつなぐ

私たちを包む大自然の風景は、見る人の心を投影しながら技法も形もさまざまに表現されてきました。ここでは湿潤な大気に水墨の濃淡を駆使して描きつがれた「松林」と、あざやかに桜が咲き誇る「吉野山」を通して、名所や風景がいかに描き継がれてきたかをご覧いただきます。

国宝 長谷川等伯筆 松林図屛風

国宝
長谷川等伯はせがわとうはく
松林図屛風しょうりんずびょうぶ
安土桃山時代・16世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月6日】

伝雪舟等楊筆 詹仲和賛 富士三保清見寺図

伝雪舟等楊筆 詹仲和せんちゅうか
富士三保清見寺図ふじみほせいけんじず
室町時代・16世紀
東京・永青文庫蔵
【展示期間:5月8日~27日】

曾我蕭白筆 富士三保松原図屛風

曾我蕭白そがしょうはく
富士三保松原図屛風
江戸時代・18世紀
滋賀・MIHO MUSEUM蔵
【展示期間:5月8日~27日】

重要文化財 豊公吉野花見図屏風

重要文化財
豊公吉野花見図屛風ほうこうよしのはなみずびょうぶ
江戸時代・17世紀
京都・細見美術館
【展示期間:4月13日~5月6日】

10 花鳥をつなぐ 10 花鳥をつなぐ

季節とともに移ろう身近な花や鳥。そこにはときに人々の心情が投影され、時を超えて愛されてきました。ここでは「蓮」と「雀」に注目し、中国から日本へとモチーフが伝承され、連綿と描き継がれた様相をご紹介します。

伊藤若冲筆 鶏図押絵貼屏風 6曲1双

酒井抱一さかいほういつ
白蓮図びゃくれんず
江戸時代・19世紀
京都・細見美術館蔵
【通期展示】

重要文化財 野辺雀蒔絵手箱

重要文化財
野辺雀蒔絵手箱のべすずめまきえてばこ
平安時代・12世紀
大阪・金剛寺蔵
【通期展示】

11 人物をつなぐ 11 人物をつなぐ

17世紀初頭、現世を楽しもうという時代風潮の高まりにあわせ、同時代の風俗や内面意識を主題とした人物画(風俗画)が描かれました。ここでは男女の間で交わされる視線と、古典文学からの図柄の転用が表す意味に注目して、風俗画や浮世絵の誕生について考えます。

国宝 岩佐又兵衛筆 洛中洛外図屛風

国宝
岩佐又兵衛いわさまたべえ
洛中洛外図屛風らくちゅうらくがいずびょうぶ舟木本ふなきぼん
江戸時代・17世紀
東京国立博物館蔵
【通期展示】

菱川師宣筆 見返り美人図

菱川師宣ひしかわもろのぶ
見返り美人図
江戸時代・17世紀
東京国立博物館蔵
【通期展示】

国宝 風俗図屛風(彦根屛風)

国宝
風俗図屛風(彦根屛風)
江戸時代・17 世紀
滋賀・彦根城博物館蔵
【展示期間:5月15日~ 5月27日】

12 古今をつなぐ 12 古今をつなぐ

19世紀に西洋から新しい表現技法が一斉に流入すると、日本美術は大きく変容しました。ここでは大正から昭和にかけて活躍し、写実的画風で知られた洋画家・岸田劉生[きしだりゅうせい](1891~1929)を取り上げ、東洋絵画に学んで意識的にその伝統につながった様子を、その代表作「道路と土手と塀(切通之写生[きりどおしのしゃせい])」と「野童女[やどうじょ]」からみていきます。

重要文化財 道路土手塀(切通之写生) 岸田劉生筆

重要文化財
岸田劉生きしだりゅうせい
道路と土手と塀(切通之写生)
大正4年(1915)
東京国立近代美術館蔵
【通期展示】

重要美術品 くだんうしがふち 葛飾北斎筆

葛飾北斎かつしかほくさい
くだんうしがふち
江戸時代・19世紀
東京国立博物館蔵
【展示期間:4月13日~5月13日】